大野英男 総長

東日本大震災の発生以降、本学は東日本大震災の被災地に所在する総合大学として、これまで地域の復興・新生を牽引し、「社会と共にある大学」という新たなアイデンティティを獲得してきました。私の総長としての役割は、里見前総長が培ったその成果を土台として、東北大学を「創造と変革を先導する世界屈指の大学」へと成長、飛躍させることです。

本学は、2017年6月に文部科学大臣から指定国立大学法人に指定されました。指定国立大学法人としての本学の将来構想は、国際的プレゼンスの抜本的向上と、社会からの要請にこたえる大学の機能を強化することです。具体的には、人材の育成、研究力の強化、社会との連携、大学経営の革新などを互いに有機的に連携させながら実行することで、「世界最高水準の知を創造」しつつ、「未来を拓く変革を先導」します。これらの営みを通して、学生諸君や若い研究者たちの挑む心を受けとめ、伸ばし、世界で活躍できる人材を育成しながら、2030年を目途に世界から尊敬される世界の三十傑大学を目指します。

本学は、これからも国内外の多くの皆様からのご支援を支えに、被災地の中心にある指定国立大学法人として、東北の復興はもとより社会の変革そのものを先導する大学でありたいと考えております。本格的復興に向けて、たゆまぬ努力を続けていきます。

 

 

原 信義 理事

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、地震と津波、そして東京電力福島第一原子力発電所の事故により、歴史上類をみない未曽有の大災害となりました。東北大学も建物や研究設備を中心に、被害額が約569億円にも達する大きな被害を受け、自らの教育・研究活動の再開のために多大な労力を割くことを余儀なくされました。そのような状況の中にあっても、大学病院を中心にした緊急医療支援活動をはじめ、地震・津波に関する各種情報発信と被害状況調査、放射線モニタリング、原子炉施設内への災害ロボット投入など、私たちは被災地での緊急支援活動に全学を上げて取り組み、また、多くの学生がボランティア活動に参加しました。

このような発災直後の取組を通じて、私たちは被災地の中心にある総合大学として、東北の復興と日本の新生を先導する責務を果たす必要があることを強く自覚するようになりました。そして、震災直後の2011年4月に、全学組織として「東北大学災害復興新生研究機構」を設置し、総合大学の強みを生かした復興プロジェクトを開始しました。これまで災害科学や地域医療、環境エネルギーなどの8つの重点プロジェクトを編成・始動させるとともに、教職員が自発的に取り組む100を超える復興支援プロジェクトを支援しています。

東日本大震災の経験と教訓を未来に伝え、世界に発信し続けることに終わりはありません。震災を風化させず、着実に復興の進展が図られるよう、必要な取組を継続することが重要です。特に、原子力災害からの復興には長期間を要しますので、必要な研究と人材の育成を、国内外の様々な機関と連携しながら息長く続けなければなりません。被災地の皆様そして協力者の方々と一緒になって、震災復興と新しい社会の実現を目指して歩みを進めて参りたいと思います。引き続き皆様方の暖かいご支援とご協力をお願いいたします。